Instagram

リリースから2ヶ月で100万人のユーザーを獲得したInstagramの秘策とは

現在のInstagram

Instagramは2010年10月にAppStoreでリリースされ、12月までで100万人のユーザーを獲得(※1)した。2019年3月時点では日本国内の月間アクティブアカウントが3300万を突破(※2)し、多くのユーザーを誇るSNSの一つとして非常に有名である。InstagramはInstant(即席の)+telegram(電報)からなるように、撮った写真をすぐにシェアすることができるのが特徴であり、日常を共有するための機能が高く洗練されているのはもちろん、近年はショッピング機能なども備わりその役割は多面化しつつある。

このように大きく発展しているInstagramであるが、ローンチから普及までの段階で特徴的なのは「サービスの用途自体の大きなピボット」と「圧倒的なプロモーション」である。

(※1)Instagramはリリースから2ヶ月で100万人ユーザーを獲得

(※2)Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破

Instagramの世界的なユーザー遷移
(引用:https://www.statista.com/chart/9157/instagram-monthly-active-users/)

もともとInstagramは位置情報共有サービスだった

Instagramは2012年にMeta社(当時のFacebook社)に買収されたが、Instagramの創業者はKevin SystromMike Kreigerの二人であった。Kevinは、二歳からプログラミングに関心があり、名門スタンフォード大学に進学したのち、コンピュータサイエンスと経営学を学んだ。アナログ写真が大好きだった彼は、大学卒業後にイタリアのフィレンツェで写真を学ぶ。写真への愛がのちにInstagramを生み、投稿形式もポラロイド写真を意識して1:1で構成されることになるのだが、当初彼が開発したのはBurbnと呼ばれる位置情報共有サービスで、人々が位置情報を共有して待ち合わせの場所をアップできるようなアプリであった。彼はBurbnをきっかけに投資家のSteve Andersonから50万ドルの支援を受け、旧友Mikeと共にBurbnの本格的な創業を開始した。

しかし数ヶ月経ってもユーザーは100人ばかりであり、資金調達前のユーザーがすでに80人であることを踏まえると新規獲得ユーザーは20人のみであった。

ここで、KevinとMikeが考えたのは、“100人のユーザーしかいなくてもBurbnを利用する人がいるのはなぜか?”ということである。この質問に向き合い、問題点を追求する中でBurbnは現在のInstagramへと変化していったのだ。

BurbnからInstagramへ

では、100人のユーザーしかいなくてもBurbnを利用する人がいるのはなぜだったのだろうか。

そもそもBurbnの当初の目的は、当時流行し始めていた「位置情報の共有」であった。しかしBurbnを利用しているたった100人のユーザーは、主に日常的な写真を共有するためだけにサービスを利用していたのだ。そこで、KevinとMikeはアプリの方向性を位置情報共有サービスから日常的な写真の共有サービスへと大きくピボットすることを決断した。

次に、KevinとMikeは競争力のあるSNSを作るため、市場にあるあらゆる競合他社を研究した。当時はSNSの中でもPath(※3)が大流行していたため、Pathの研究をしていたと言われている。

競合他社の分析を経て、二人はInstagramのプロトタイプ (: Scotch) を開発した。当時、Scotchが特別で魅力的であったのは、iPhone 4でも使えるフィルター機能だった。美しいパノラマ写真を撮影し、1980年のポラロイド写真風に仕上げることは、当時他の写真共有アプリケーションでできることではなかった。

Instagram初期のフィルター
(引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/Instagram)

この開発過程で興味深いのは、Instagramの魅力とされるこのフィルターはユーザーリサーチや創業者たちのユニークな洞察から生まれたものではないということだ。

実は当時、Burbnの失敗で燃え尽きたKevinは、ヤケクソでガールフレンドと休暇を過ごしていたのだが、彼女にScotchを見せると、「Kevinの写真は友人のGregほど写りが良くないから投稿しない(Gregは別のアプリで写真を加工済みだった)」と言ったという。そこで休暇から戻ったKevinは、Scotchにフィルターを追加することに決めたのだった。

こうして、位置情報共有サービスであったBurbnは写真共有サービスInstagramとして生まれ変わった。

(※3) Path…2015年カカオに買収され、2018年11月にカスタマーサービスが終了したSNS。Facebookと類似した機能を持っていたが、“クローズドSNS”として、繋がれる人数を150人に限定したSNSであった。

Instagramの圧倒的なプロモーション

ついにInstagramの正式なプレローンチである。AppStoreにアプリをローンチする際、プレローンチの段階で試験的にユーザーを招待することができるTestflight Beta Testingというサービスがあるのだが、プレローンチの段階で招待できるユーザーは当時100人に制限されていた。よって、MikeとKevinは最初のターゲットを2つのカテゴリーに絞った。

1つ目のカテゴリーはジャーナリストで、アプリがリリースされたときに、記事を書いてもらうため。2つ目は Dribbleのデザイナーで、Dribbleのトップデザイナーは、アプリに掲載されるコンテンツの品質を高めてくれるだろうと考えたからだ。

具体的には、

・100万人のフォロワーを誇る投資家にinstagramについてツイートしてもらう

・それを見たデザインインフルエンサーにInstagramを利用してもらい、ブログなどでその存在を広めてもらう

TechCrunch+wiredなどの出版社にもアプローチしてinstagramを掲載してもらう

など、さまざまな方法で効果的なプロモーションを進めていった。

写真共有サービスであったのに写真家などのプロを招待しなかったのは、Instagramは一般人向けのサービスであるということを考慮したためだった。

デザイナーを招待することでアプリの品質を保ちつつ、ジャーナリストにInstagramを広めてもらうという計算高い戦略はプロモーションの成功例と言えるだろう。

テスト中のinstagramはプロモーションをしてくれるレポーターやほんの一握りのウェブデザイナーだけが使えるものだったが、その排他性こそが価値であった。一部のユーザーしか使えないという欠点を排他性という価値に転換し、PR+インフルエンサーというプロモーションの構造を確率することで、Instagramを知名度の高いものとしていったのだ。

Instagram成功の秘訣

Instagramは、上記のようにプロモーションも圧倒的であるが、ローンチの初期段階でユーザーのニーズを正確に把握し、サービスの用途を大きく転換させたという点で特徴的である。スタートアップは起業家の熱い思いが込められて育つものであり、例えユーザーが集まらなかったとしても、広告の方針やサービスの詳細だけでなくサービスの中身そのものをガラッと方向転換するのは難しいだろう。それでも、自分たちのサービスで魅力が残っているとすればそれは何かを客観的に分析し続け、どう使って欲しいかでなくどう使われているかに注目した結果が今のInstagramに繋がっているのである。

参考文献

https://ja.wikipedia.org/wiki/Instagram

https://about.fb.com/ja/news/2019/06/japan_maaupdate-2/

https://mag.ibis.gs/marketing/sns/instagram_190423/

https://www.idownloadblog.com/2010/10/07/instagram-a-beautiful-photography-app-and-social-network/

https://techcrunch.com/2010/10/06/instagram-launch/

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